新型コロナワクチンの開発・製造をいち早く成功させた製薬会社として世間の耳目を集めるファイザー社。
米国本社の歴史は古く、1849年に薬剤師見習いのチャールズ・ファイザーと菓子職人のチャールズ・エアハルトが共同で設立。
以後、ペニシリンの量産や抗生物質の開発などで成功を収め、現在までに米国ほか、欧州、中国、日本に開発拠点を置くグローバル企業に成長しました。
同社の2020年12月期決算は売上収益が4.6兆円(前期比1.8%増)と緩やかな増収。
コロナワクチンの収益は時期以降に本格化するようです。国内最大の製薬企業である武田製薬工業の売上(3.2兆円)と比較すると同社のほうが4割以上大きい計算になります。一方、最終利益は前期から7322億円(41%)も減少。
これは一般用医薬品の合弁事業に関連する特別利益8895億円が消失したためで本業が不調なわけではありません。
同社の損益計算書で目を見張るのは、その利益率の高さ。
粗利率は、なんと79.3%。
研究開発費をみると当期は約1兆円と売上収益の22.4%を占めています。
武田薬品の研究開発費(4558億円)の2倍以上であり、同社がいかに新薬の研究開発に巨費を投じているかが分かります。
損益計算書
18年3月期 | 19年3月期 | 20年3月期 | |
---|---|---|---|
売上収益 | 40,825 | 41,172 | 41,908 |
売上総利益 | 31,838 | 32,921 | 33,216 |
(粗利率) | (78.0%) | (80.0%) | (79.3%) |
販売費及び一般管理費 | 12,612 | 12,750 | 11,615 |
研究開発費 | 7,760 | 8,394 | 9,405 |
無形資産償却費 | 4,736 | 4,462 | 3,436 |
営業利益(試算) | 6,730 | 7,315 | 8,760 |
(売上収益営業利益率) | (16.5%) | (17.8%) | (21.0%) |
特別利益 | – | 8,086 | 6 |
継続事業当期利益 | 3,861 | 10,867 | 7.021 |
非継続事業当期利益 | 7,328 | 5,435 | 2,631 |
当社株主帰属利益 | 11,153 | 16,273 | 9,616 |
キャッシュフロー計算書
18年3月期 | 19年3月期 | 20年3月期 | 21年3月期 | |
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営業活動によるキャッシュフロー | -38,701 | 53,834 | 34,454 | -45,466 |
税引前利益 | 8,631 | 1,790 | 4,131 | 21,296 |
信用取引資産及び負債の増減 | -55,552 | 56,498 | 28,880 | -67,217 |
預託金及び金銭の信託の増減 | -1,797 | -13,459 | -60,603 | -144,523 |
受入保証金及び預り金の増減 | 7,861 | -8,699 | 74,781 | 141,399 |
投資活動によるキャッシュフロー | -5,872 | 22,763 | -7,068 | -7,158 |
フリーキャッシュフロー | -44,573 | 76,597 | 27,386 | -52,624 |
財務活動によるキャッシュフロー | 49,870 | -5,909 | -48,399 | 95,483 |
短期借入債務の収支 | 47,800 | -40,816 | -26,730 | 91,979 |
長期借入債務の調達による収入 | 9,970 | 58,924 | 14,105 | 9,970 |
社債発行による収入 | 14,483 | 28,016 | 15,495 | 10,310 |
現金及び現金同等物の増減額 | 5,297 | 70,688 | -21,013 | 42,859 |
現金及び現金同等物の期末残高 | 81,456 | 150,296 | 127,832 | 174,068 |
ファイザーの総資産は17兆円で武田の12.9兆円より約3割大きく、資産の77%は非流動資産が占めています。
中でも最も大きな割合を占めるのが「のれん」で、当期は5.5兆円(資産の32.1%を占める)が計上されています。
同社は09年に米・ワイス社を7.5兆円で19年には米・アレイバイオファーマ社を1.2兆円で買収するなど、数年おきに数兆円規模の買収を繰り返してきました。これにより有形固定資産を遥かにしのぐ多くの無形資産(医薬品の特許権など)を手に入れ、売上規模を拡大してきたのです。
ただし、特許を取得しても独占販売できるのは5~10年程度なため、その間にどれだけ利益を上げられるかが勝負となります。ファイザーの総資産回転率は0.27で武田(0.25)よりもやや高い程度ですがROAは6.2%と武田(2.9%)の倍以上あり、同社の利益率の高さが見て取れます。
資産17兆円に対し、株主資本は7兆円。
株主資本比率は41.0%と計算でき、前期(37.9%)から健全性は増しています。
また負債のうち純有利子負債が4.2兆円あるものの前期より24%減少。
バランスシート
19年3月期 | 20年3月期 | |
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資産の部 | ||
流動資産 | 32,803 | 35,067 |
現金及び現金同等物 | 1,121 | 1,784 |
短期投資 | 8,525 | 10,437 |
非流動資産 | 134,791 | 119,162 |
建物及び構築物 | 12,969 | 13,900 |
無形資産 | 33,936 | 28,471 |
のれん | 48,202 | 49,577 |
資産合計 | 167,594 | 154,229 |
19年3月期 | 20年3月期 | |
---|---|---|
負債の部 | ||
流動資産 | 37,304 | 25,920 |
預り金 | 16,195 | 2,703 |
受入保証金 | 66,844 | 64,835 |
社債及び借入金 | 35,955 | 37,133 |
負債合計 | 104,148 | 90,756 |
資本(純資産)の部 | ||
資本合計 | 63,143 | 63,238 |
負債及び資本合計 | 167,594 | 154,229 |