国内外で外食・居酒屋事業を展開するコロワイド。
同社は、51社で構成される外食産業グループでレインズインターナショナル(牛角、温野菜・土間土間・フレッシュネスバーガーなど)、カッパ・クリエイト(かっぱ寿司など)、アトム(ステーキ宮など)といった主要子会社を通じて一般消費者にもなじみの深い飲食店チェーンを複数展開しています。
同社の特徴は積極的なM&Aで売上と資産を急増させていることです。
2002年に平成フードサービスを買収して以降、これまでに十数社を買収。20年には定食チェーンを営む大戸屋ホールディングスに対し敵対的TOB(株式公開買い付け)を成功させ、子会社化したことも話題となりました。
売上収益をみると当期は1682億円で前期から672億円(28.5%)減少しています。
決算説明資料によると20年4月に緊急事態宣言が発出された際は既存店売上が前期比41%まで減少。
売上総利益は927億円で前期比30.9%減と売上収益よりもさらに減少幅が大きく、粗利率は55.1%にまで低下。
一方で販管費は人件費を21.9%も減らすなどして経費削減を実施しましたが総利益の減少を補いきれていません。その結果、事業利益は81億円の赤字へと転落しました。
その他の営業収益は休業に伴い支払われた支援金や協力金などもあり増収となりましたが、営業費用では前期に続き41億円の減損損失が計上されています。
これは店舗の閉鎖や客数減少による収益力の低下に関連して計上された損失です。
IFRSベースの営業利益は132億円の赤字、最終利益は97億円の赤字と損失が拡大しました。
損益計算書
17年3月期 | 18年3月期 | 19年3月期 | 20年3月期 | 21年3月期 | |
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売上収益 | 234,444 | 245,911 | 244,360 | 235,334 | 168,181 |
売上総利益 | 132,857 | 138,658 | 138,779 | 134,166 | 92,657 |
(売上総利益率) | (56.7%) | (56.4%) | (56.8%) | (57.0%) | (55.1%) |
販売費及び一般管理費 | 126,051 | 131,464 | 130,280 | 128,535 | 100,804 |
人件費 | 60,339 | 63,703 | 64,240 | 63,949 | 49,969 |
事業利益 | 6,806 | 7,193 | 8,499 | 5,632 | -8,146 |
その他の営業収益 | 3,201 | 1,523 | 1,647 | 1,507 | 1,745 |
その他の営業費用 | 5,895 | 4,475 | 6,064 | 11,745 | 6,762 |
減損損失 | 3,650 | 3,295 | 4,890 | 10,619 | 4,121 |
(IFRS基準)営業利益 | 4,112 | 4,242 | 4,082 | -4,606 | -13,163 |
親会社所有者帰属当期利益 | -1,398 | 1,170 | 632 | -6,447 | -9,728 |
同社の苦境は主要子会社のセグメント情報を見ても明らかです。
レインズ、カッパ、アトムの3社はいずれも減収減益。特に牛角などを展開するレインズの売上収益は前期比44.3%も減少しています。当期はグループ最大の78億円の損失を計上。
資産がどれだけ効率的に売り上げを生み出したかを示す総資産回転率を計算するとコロナ前の19年3月期はレインズ1.1、カッパ1.4、アトム1.6だったのに対し、当期はレインズ0.5、カッパ1.0、アトム0.9といずれも低下。客足が回復していないのが伺えます。
当期最終利益は赤字となりましたが減価償却費や減損損失など資金流出を伴わない項目が加算された結果、営業キャッシュフローはかろうじてプラスを維持しています。
一方で有形固定資産への投資に加え、大戸屋買収や牛角のフランチャイズ権などの買い取りに資金を投じたことで投資キャッシュフローは129億円のマイナス。その結果、フリーキャッシュフローも107億円のプラスから95億円のマイナスへと大きく悪化しました。
不足分を賄うため同社は子会社(アトム)の株式を一部売却したほか新株発行や追加借入を実施。
財務キャッシュフローは159億円のプラスとなり残高は62億円積み増しました。
自己資本比率は11.9%と前期から若干増加しましたが財務安全性は低い水準です。
流動比率は59.4%と前期に続き100%を下回っており余裕がありません。
ネットD/Eレシオは3.6倍で前期(3.1倍)から悪化。純有利子負債額は営業キャッシュフローの39.5倍にも上り、債務返済能力は極めて低い状態です。
また、短期有利子負債をみると1年以内に返済が必要な社債と借入金が計517億円ある一方で次期の予想当期利益(グループ全体)は24億円。これに当期並みの減価償却費を足し戻しても250億円程度にしかならず自力では返済が困難なことが分かります。
キャッシュフロー計算書
18年3月期 | 19年3月期 | 20年3月期 | 21年3月期 | |
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営業活動によるキャッシュフロー | 16,658 | 15,971 | 26,072 | 3,420 |
減価償却費及び償却費 | 10,874 | 10,434 | 25,950 | 22,592 |
減損損失 | 3,295 | 4,890 | 10,619 | 4,121 |
投資活動によるキャッシュフロー | -5,281 | -7,457 | -15,348 | -12,924 |
連結子会社の取得による支出 | – | – | – | -4,369 |
営業譲受による支出 | – | – | -2,589 | -3,009 |
フリーキャッシュフロー | 11,377 | 8,514 | 10,724 | -9,504 |
財務活動によるキャッシュフロー | -11,390 | -9,496 | -12,338 | 15,890 |
子会社株式売却による収入 | – | – | – | 16,712 |
現金及び現金同等物の期末残高 | 34,605 | 33,854 | 32,215 | 38,422 |