孫正義氏率いるソフトバンクグループは当期(2021年3月期)、国内史上最高額となる約5兆円もの純利益を達成しました。
これはトヨタ自動車の純利益の2倍以上で、米・アップル社、サウジの国営石油会社サウジアラムコに続いて世界3位の大きさです。
モバイル通信等の「ソフトバンク事業」と半導体「アーム事業」が主な売上を占めており、前期と比べ売り上げは7.4%増、売上総利益は8.3%増と好調です。
「投資損益」の項目では前期は1.4兆円の損失だったのが当期は7.5兆円もの巨額利益が計上されています。
この利益の源泉は「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」からの投資損益です。
SVFはソフトバンクGが17年に設立した投資ファンド。前期は新型コロナショックによる株式市場の暴落で1.8兆円の損失を出したのに対し、当期は「コロナバブル」により一転、6.3兆円もの利益を計上しました。
このように同社の収益はソフトバンクをはじめとする「事業」の売上とSVF等の「投資」損益の2つで構成されています。
20年3月期 | 21年3月期 | |
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売上高 | 5,238,938 | 5,628,167 |
売上原価 | 2,584,273 | 2,753,238 |
売上総利益 | 2,654,665 | 2,874,929 |
投資損益合計 | -1,410,153 | 7,529,006 |
(うち、SVF1およぼSVF2等からの投資損益) | -1,844,867 | 6,292,024 |
(うり、持株会社投資事業からの投資損益) | 484,308 | 945,944 |
販売費及び一般管理費 | 2,060,080 | 2,271,497 |
SVF1における外部投資家持分の増減額 | 540,930 | -2,246,417 |
税引前利益 | 50,038 | 5,670,456 |
親会社の所有者に帰属する純利益 | -961,576 | 4,987,962 |
事業
大きく3つのセグメントに分けられています。
1つ目はスマートフォンやインターネットのCMでお馴染みの「ソフトバンク事業」です。
当期の売上は5.2兆円で前期から7.0%増加。事業全体の売上(5.6兆円)の92%とそのほとんどを占めています。税引前セグメント利益も8479億円と前期比4.0%増。
売上高利益率は16.8%から16.3%へ若干低下しましたが安定して高収益を上げていることが分かります。
ちなみにソフトバンク事業には本体のデータ通信サービス事業だけでなく、ヤフーやLINE、ZOZO、アスクル、一休、出前館などを連結子会社にもつ「Zホールディングス」の事業も含まれます。
そのためセグメント利益にはこれらの持ち株比率に応じた利益が反映されています。
2つ目は半導体の設計などを行う「アーム事業」です。
売上は2098億円で前期比6.5%増でしたが税引き前損益は339億円の赤字となりました。ソフトバンクGは20年9月にアーム事業をゲーム用の高速処理プロセッサーで有名な米・エヌビディア社へ最大400億米ドル(約4.2兆円)で売却することを発表しました。
最後の「その他事業」には電子マネー決済サービスのPayPay事業のほか19年3月より始動したラテンアメリカにおけるファンド事業が含まれています。売上は2386億円(前期比15.9%増)、セグメント利益は926億円(前期比3923億円増)と大きく改善。
意外なことにPayPay事業は726億円の赤字だった一方でラテンアメリカ・ファンドは1888億円の黒字。
投資
「投資損益」は大きく「SVF事業」と「持株会社投資事業」で構成されています。
ソフトバンクGは外部投資家と共に子会社のSBIAを通じて世界各国のユニコーン企業187社に投資。
その運用益を投資家と分配しています。ポイントはこの運用益には「実現益(実際に得た現金)」だけでなく、「未実現評価損益」も含まれること。
つまり投資先の企業価値が上がればその上昇分が「利益」として、逆に下がれば「損失」としてソフトバンクGの損益に計上されるのです。
当期は、株式市場の好況により投資先の企業価値が軒並み高騰。実際、実現益はウーバー社などの株式売却で得た4196億円のみで投資利益のだいぶぶん(5.9兆円)は未実現評価益が占めています。
なかでもIPOによって「韓国のアマゾン」ともいわれるクーバン社の時価総額が2.6兆円に、米国最大手のフードデリバリー、ドアダッシュ社の時価総額が6611億円まで上昇したことが利益の拡大に大きく貢献しました。
一方、もうひとつの「持株会社投資事業」の投資損益は9461億円(前期比95%増)でしたがセグメント利益は7609億円と前期から1528億円減少しました。
前期はアリババの株式売却で1.2兆円もの利益がありましたが当期はそれが消滅。他方でTモバイル株式売却により4218億円の利益を得ています。
ソフトバンクホークス
ホークスの固定資産は96%あり、1066億7400万円計上されています。
ホークスの固定資産が大きいのは球場を保有していることが理由です。
ソフトバンクは2012年に本拠地である福岡ヤフージャパンドーム(福岡PayPayドーム)をシンガポール政府投資公社から870億円で買い取っています。
この福岡ドームの所有権が計上されているためホークスの固定資産はこれほどまでに大きくなっているのです。
なぜプロ野球球団は球場を保有するのか?
それは球場の施設利用料削減が見込めることに加え球場を核とした事業展開によりファンサービスを拡充し、そこでの収益も確保できるからです。
福岡ドームを取得する前の年間使用料は約50億円です。この費用削減分を戦力強化に振り分けることで年棒の高い選手を獲得しやすくなったといわれています。