下の図は製薬メーカーのエーザイの売上高の推移をグラフ化したものです。
2011年を境に売上高が大きく減少していることが分かります。
新薬メーカーの経営論点にパテントクリフというものがあります。
新薬は上市後の数年間は特許で守られているためその期間には独占的に商品を販売することが可能です。
ところが特許が切れてしまうと独占販売が難しくなるためジェネリック医薬品(後発医薬品)の参入で競争環境が急に激しくなり、その結果売上高が急減することになります。
当時のエーザイの主力製品は「アリセプト」というアルツハイマー治療薬でした。ところが特許が切れてしまった結果、アリセプトの売上高はたった1年で半分になってしまいます。
投資活動
2008年だけ財務活動によるキャッシュフローと投資活動によるキャッシュフローが大きくなっています。
つまり多額に資金を調達してそのまま投資に回しているのが2008年です。
この時期に何をしていたのかを見てみると2008年に米国のMGIファーマというオンコロジー(抗がん剤)領域の新薬メーカーを約39億ドルで買収しています。
エーザイは次の主力製品を育てるために市場成長率の高いがん治療の分野に新たな製品を作りたいと考えます。
しかし新薬の開発には当然時間がかかります。すでにがん治療の知見がある企業をM&Aで買収して開発のスピードを上げることができます。
2011年から2013年にかけて本業の収入が減っているにもかかわらずフリーキャッシュフローはこの時期に増えています。
売り上げが上昇傾向に乗った2019年のタイミングで抗がん剤が主力製品になって業績の持ち直しに成功しているということが決算数値に表れています。